TACOSとは?
TACOS(Total Advertising Cost of Sales)とは、広告費が全体売上に占める割合を示す指標です。具体的には「広告費 ÷ 総売上 × 100」で算出されます。
TACOSの大きな特徴は、広告からの売上だけでなく、オーガニック(自然検索)やリピーターなども含めた総売上をベースにしている点です。
これにより、広告が全体のビジネスに与える影響度合いが可視化されます。ROAS(広告費に対する売上)やACOS(広告費 ÷ 広告売上)と異なり、広告依存度やブランドの自走力を見るうえで重要な指標となります。
広告施策の費用対効果を一面的に評価するのではなく、事業全体の健全性を把握するためにTACOSは非常に有効です。
TACOSの計算式と基本的な考え方
TACOSの計算式は「広告費 ÷ 総売上 × 100」で求められます。
たとえば、広告費が10万円、総売上が100万円であれば、TACOSは10%になります。この数値は、売上に対してどれだけの広告費をかけているかを示すため、
- TACOSが高い=広告依存が強い
- TACOSが低い=オーガニックが機能している
という読み取りが可能です。特にブランド力が高まり、自然検索やリピーターによる売上が増えるとTACOSは下がっていく傾向にあります。
逆に、新規ブランドの立ち上げ初期では、広告の比率が高くなるためTACOSも高くなるのが一般的です。TACOSの推移を見ることで、広告とオーガニックのバランスや成長戦略の成果を定量的に捉えることが可能になります。
TACOSを使うべき理由
TACOSを使う最大の理由は、広告の費用対効果をより実態に近い形で測定できる点です。従来のROASやACOSは広告売上に基づく指標であり、広告施策の局所的な成果しか見えません。
一方、TACOSは事業全体における広告の影響度合いを把握できるため、長期的な戦略立案や予算配分にも役立ちます。
たとえば、TACOSが改善していれば、広告をきっかけにオーガニック売上が増加したと解釈でき、ブランドの認知やLTV向上につながっている証拠とも言えます。
また、広告依存が過剰になっていないかを定期的にチェックすることで、利益率を損なわずに成長を目指す健全なマーケティング戦略が構築できます。
TACOSが高いとき・低いときの原因と改善策
TACOSが高い場合は、広告依存度が高く、オーガニック流入やリピーターによる売上が少ない可能性があります。
たとえば、ブランドが未成熟で自然検索での流入が得られていなかったり、リピート施策が不足しているなどの課題が考えられます。
この場合は、広告クリエイティブの改善だけでなく、SEOやSNS、メールマーケティングなど非広告施策の強化が重要です。
一方、TACOSが低すぎると、新規獲得に消極的すぎることや、広告予算が過度に抑えられていることも考えられます。フェーズによってはTACOSがある程度高くても問題ないため、目標値を適切に設定したうえで、原因を見極めて改善していくことが重要です。
他の広告指標との違いと使い分け
TACOSはACOSやROASと異なり、広告効果を売上全体に対して評価する指標です。
- ACOSは「広告費 ÷ 広告売上」
- ROASは「広告売上 ÷ 広告費」
で、いずれも広告によって直接得られた売上にフォーカスしています。
これに対し、TACOSは広告による直接売上に限らず、自然検索や指名検索、SNS経由などすべてを含んだ総売上との関係性を評価できるため、経営やマーケティング全体の視点で有効な指標です。広告運用レベルではACOSやROASを見ながら、経営レベルではTACOSを確認するという使い分けが理想的です。それぞれの指標の特徴を理解し、目的に応じて活用することで、より最適な広告戦略が実現できます。
TACOSの目標設定と適正値は?
TACOSの目標値は一律ではなく、事業フェーズや商品単価、業界によって異なります。一般的には、立ち上げ期は20~30%程度、成長期で10~20%、安定期では5~10%が目安とされます。
新規獲得を重視するフェーズではTACOSが高くなることは自然ですが、同時にオーガニック売上の育成も重要です。短期的な数値だけに捉われず、LTVの最大化を見据えてバランスを取ることが大切です。
また、商品単価が高いほど広告費を回収しやすいため、TACOSの目標も緩やかに設定できます。競合との比較や利益率、成長率なども踏まえたうえで、自社に最適なTACOS目標を定めましょう。
TACOSを管理するためのツールとダッシュボード
TACOSを効率的に管理するためには、定期的な数値のモニタリングが欠かせません。
Amazonセラーセントラルでは、広告レポートと売上データを統合することでTACOSを算出可能です。
また、Shopifyや楽天市場などのECプラットフォームでは、
GoogleスプレッドシートやBIツール(Looker StudioやTableauなど)と連携することで、日々のTACOSを可視化できます。
さらに、KPIダッシュボードにTACOSを組み込むことで、広告費・売上・利益率などを一元的に管理することができます。ツール選定のポイントは、「広告データと売上データの統合精度」「リアルタイム性」「チームでの共有のしやすさ」などです。
まとめ
TACOSは、単なる広告効果の評価にとどまらず、ビジネス全体の成長や健全性を把握する上で非常に有用な指標です。
従来のACOSやROASでは見落としがちな、オーガニック売上やブランドの成長も評価対象に含まれるため、より包括的なマーケティング戦略を構築できます。
TACOSを継続的にモニタリングすることで、広告と自然流入のバランス、利益率の変化、そして顧客基盤の広がりを定量的に把握することが可能です。広告費を単に抑えるのではなく、事業フェーズに応じてTACOSの目標を適切に設定・改善していくことで、長期的かつ持続可能な成長が実現できます。
今後の広告戦略において、TACOSは経営判断の強力な指針となるでしょう。